The United States Vs. Billie Holiday


観たかった映画。


どんな音楽も、どんな歌手が歌う歌も、聴き手は無責任に聴けるのが音楽の素晴らしい点だと思う。最初に聴いた時に耳から入ってくるメロディーとリズム、まずはそれで自分が好きかどうかが分かる。意味は後からついてくる。僕はそうやって大半の音楽を聴いてきた。


Billie Holidayを初めて聴いた時に残った印象は声だった。ブルージーで、渇きと潤いが交互にやってくるような声、曲調が明るくても、ビッグバンドで歌っていても、どこか独りで歌っているような悲しさを纏う声。僕はすぐその声の虜になった。


Holiday役の主演Andra Dayがとにかく素晴らしい。映画ではBillie Holidayの昔の録音を使用していると思う人も多いかもしれないが、Andra本人が歌っている。ていうかこの歌手を知らなかった自分が恥ずかしい。映画館のスピーカーで聴くAndraのBillie Holidayはそれはそれは極上の時間だった。サントラも他の音源も聴きたい。


FBIがどうしてもHolidayに歌わせたくなかった曲、「Strange fruit/奇妙な果実」。この歌を初めて聴いたのは何年も前だけど、あの時は正直この歌が何を意味するのかは分からなかった。曲調も厳かで謂わゆるキャッチーなJazz songではなかったから、あの頃の浅はかなジャズ好きな自分にはこの歌を気に留める余裕がなかった。映画の中で何度かAndraが歌う歌詞とシーンの描写を見てようやく意味が分かった。魂が揺さぶられるような衝撃と、自分には到底理解できない黒人の悲しさが涙になって溢れてきた。本物のプロテストソングだなと思った。


人種差別、女性差別、暴力、少女時代の性被害、Holidayを利用しようとする男たち。とにかく、ひどい男がたくさん登場する。

映画の8割ぐらいは煙草を吸ってるシーンで見てるだけでクラクラする。大麻、ヘロイン。虐げられる人たちがなぜドラッグに溺れたのかも分かる。


薬と男に翻弄されながらも、歌を愛し、恋をして、裏切られ、また恋をして、最期まで自由な意志を貫いて歌い続け、ステージでは拍手喝采を浴びて、多くの黒人の心に勇気を与えたのがBillie Holiday。


Jazzを歌ってるなら、観るべき映画だなと思う。とにかく音楽が、歌が素晴らしい。黒人の音楽や文化や歴史に興味があるならぜひ。今、ウクライナとロシアで起こっている戦争や、無意識に人間が持つ差別感覚や他へ発してしまう憎悪(ヘイト)への気づきにもなるのではと。


帰りに煙草と酒と人が恋しくなって、ゴールデン街のナベサンへ。映画の話をしたら店主のナオさんが、ちあきなおみのビリーホリデー物語(1990年代初)の舞台の録音音源を聴かせてくれた。ちあきなおみが歌うholidayも最高で、なぜナオさんがそんなレアな音源を持っているのか、、それは直接行って訊いたらいいと思う。昨夜は一晩中Billie Holiday。ナオさんが模写した岡本太郎の「殺すな」を見ながら酒を飲みました。


Billie Holiday大好き。


映画の中のセリフで心に残ったものをいくつか。


Tell me... what`s it like to be a colored woman?

You ever seen a lynching?

It's about human rights. The government forgets that sometimes.


Love is like a faucet. it turns off and on

Be careful with this feeling. This love right here, baby, it won't love you back. I promise.


She's made something of herself and you can't take it, because she's strong, beautiful and Black.


「Strange fruit」lyrics

Southern trees bearing a strange fruit

Blood on the leaves and blood at the root

Black bodies swinging in the Southern breeze

Strange fruit hanging from the poplar trees


Pastoral scene of the gallant South

The bulging eyes and the twisted mouth

Scent of magnolia sweet and fresh

Then the sudden smell of burning flesh.


Here is a fruit for the crow to pluck

For the rain to wither, for the wind to suck

For the sun to rot, for the trees to drop

Here is a strange and bitter crop.

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